Little AngelPretty devil 
       〜ルイヒル年の差パラレル

       “昨年の話をすると誰が笑う?”
 



一丁前に掃排弾機能として銃身に添ってついているコッキングレバーが、
ただのギミック以上の手ごたえでじゃきりと稼働し、
レシーバ部分に装填仕直したリコイルスプリングや何やの精度と共に、
きっちり仕上げた愛機をい子いい子と撫でてやる。

 「なんかドキドキする。」
 「でーじょうぶだ。」

機種は同じで、ただ迷彩色で塗装されているか否かだけが差異だという、MK53。
かなり有名なマシンガンで、
モデルガンだとはいえそのいかにもな造形と風貌には冷たい威圧が感じられ、
それを身丈の小さな幼子がいたいけな手に構えている姿は、
微妙な背徳感もあって……クル人にはクル構図かも。

 「クル人?」
 「セナは知らないままでいろ。」

あのアメフト莫迦の進にだったら
知られても一緒に首を傾げてお終いだが、桜庭あたりに訊かれたら面倒だと、
腕へラバー部分を通して下げていたゴーグルをセナへとつけてやる。
ヘアバンドのように頭を通してやり、
一旦顎まで降ろしてから持ち上げて目許へしっかり装着してやり、
それから脱いでいたニット帽をかぶせ、
ふわふかなフェイクファーのカバー付きイヤーマフをつけてやれば、
多少腕や何やが当たっても外れまい。
動き回るので汗をかくだろうから、
ウィンドブレーカの下はセーターよりも体操服とフリースと
言っておいた通りの格好で来ていた、
今日だけは優秀な“部下”のセナくんを率いて。
もはや自分たちが通う小学校なみに慣れた場所、
賊学大のアメフト部用クラブハウスからグラウンドまで、
学舎の壁へへばりつくよにしてサササッと駆け足で進み、
最後のフェンスのコンクリブロックの土台の陰で、
マシンガンへ装填したのと同じ、弾丸を詰めたマガジンを確かめ合うと、

「切れたらこうして外してこう付ける。判んなくなったら俺かルイに訊け。」
「らじゃ。」

 えと、でもルイさん、教えてくれるかな?
 教えなきゃあ俺が暴れるって判ってようから大丈夫。

いっぱしのゲリラのようないでたち (真冬着ぶくれ仕様)で、
ごしょごしょ打ち合わせ中のチミっ子たちなの、
傍らを通り過ぎつつ小首を傾げているのは新入生組。
だがだがそんな彼らには、先輩たちがほれと来る端からゴーグルを手渡しており、

 「ウチの初春恒例の縁起もんだ。甘んじて受けろ。」

軍手した方がいいぞ、地味に痛いから、と、
口に入っても大丈夫らしいが痛いのいやならマスクまでは構わんらしいぞと。
慣れた様子で注意事項を告げてやり、
練習開始の時刻を時計の針がよぎったのが“戦闘開始”の合図。

「行くぞ、セナ。」
「らじゃ♪」

小さな小学生が したたたたという物騒な射出音と共にグラウンドへ突入して来て、
トラックをランニングで走り始めた大学生らへ襲撃を掛ける。

「わっ。」
「いててっ。」
「よーいち、今年の痛てぇぞ。」

一応は尻か背中を狙うよう心掛けてるちびっこギャングたちだが、
身の丈が小さいその上、走りながらの掃射なので、
銃身がぶれて後頭部や足元へという流れ弾も多数あり、
それが当たって痛いという苦情が飛んでくるが、脚は止めないところはお流石で。

「うるせぇな、
 今年のは薄皮が剥がれて詰まらねぇように飴掛けしてあんだよ。」

昨年はそれが原因で送りシステムが詰まるというアクシデントに見舞われた。
なのでとひと手間かけたらしく、
しかも熱に溶けにくい特別仕様だそうで。

「ありがたく受けなっ!」
「うけなっ!」
「ぎゃあぁああっ!」

結構足が速い二人には油断をするとすぐにも追いつかれ、
至近からの一斉掃射に野太い悲鳴が上がる。

「今年も賑やかですねぇ。」
「セナくんまで呼んでるところが豪華なものですよねぇ。」

寸の足らない足元をとたとた弾ませて
お兄さんたちを追っ掛けるチミっ子たちが可愛いたらない、
この日恒例の “鬼ごっこ”。
女子マネたちがお顔をほころばせて見やりつつ、
さあさ、おやつの恵方巻に取りかかりましょと、クラブハウスへと向かうのも毎度の流れ。
今年も穏やかないい年になりますように…。


  「いや、穏やかだと困るんだがな。」
  「そだねー、入れ替え戦、頑張ってね。」




  
     〜Fine〜  18.02.03


 *昨年は当日にアクシデントがあったので、
  今年は万全に期した妖一くんだったようで、
  しかも土曜だったので援軍まで呼んでます。
  やっぱこれ書かないとねぇ。(笑)

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